第21章 約束
「何なに、俺らの “ら” って俺のこと?」
横から上機嫌な声が飛んできた。
「そうだよ。“ら” はお前だ、グンタ。マヤにこれから仲良くしようなって言ってたのさ」
「それ、大賛成だわ」
ウイスキーの水割りをぐいっと一気に飲み干すと、グンタはにっと白い歯を見せた。
「酒、追加するけどマヤも飲むか?」
マヤはすでに “フルーティーワイン・エスメラルダ” を一杯、エールを二杯飲んでいる。
「今夜はもう、やめときます。これ以上飲んだら、きっと酔っちゃうんで」
「マヤの酔ったところ見てみたい気もするけど、また次の楽しみにしておこう」
そう言いながら手を振って、グンタは店員を呼んだ。
「同じもの追加で」
「かしこまりました~♪ 他にはよろしいですか?」
エルドとグンタは顔を見合わせた。
「俺らはもういいな。オルオ、マヤ、何か頼みたいものがあったら頼め」
肉をたらふく詰めこんだオルオは “もういいっす” と手を振り、マヤもそれにならいかけたが “あっ” と小さく叫んだ。
「あの… 夜食を頼んでもいいですか? 私が払うので…」
調査兵団のしきたりでは、団長や兵長、分隊長に食事に連れていってもらう場合はおごってもらうが、一般兵士同士の場合は先輩と後輩の関係であっても基本的には割り勘である。
「「……夜食?」」
怪訝そうなエルドとグンタの声が重なる。
「はい。ペトラがほとんど何も食べてないから、おなかが空くだろうと思って」
「あぁ…、なるほどな」
エルドがつぶやけば、
「なるほど! まだ食べるのかと思って、その細い体のどこに入るのかと驚いたぜ。じゃあ…」
そう笑いながらグンタは待っていた店員を見上げて、追加注文をした。
「何か適当に一人前、包んでもらえる? 持ち帰るんで」
「……持ち帰りの夜食ですね~♪ かしこまりました~♪」
店員は手に持っている小さな帳面に何かを書きつけながら返事をすると、きびすを返して厨房へ消えた。