第21章 約束
「な~に~よ~! みんなして人が美味しく飲んでんの邪魔してさ!」
「すみません…。私がこのお酒をすすめなければ…」
エルドとグンタに向かって謝るマヤを指さすペトラ。
「こら〜、マヤ! な~んにも謝る必要な~んかないなーい! 言ってたと~りの葡萄酒だったよ~? あま~く… おいひぃ~…」
ろれつが怪しくなったと思ったら、そのままバタンとテーブルに突っ伏してしまった。
「ペトラ!」
慌ててマヤが肩を揺さぶるが、むにゃむにゃ言うばかり。
「オルオ、どうしよう!」
焦るマヤと対照的に、オルオは落ち着いている。
「大丈夫。こいつは酔ったらいつもこうなんだって」
「そうなの?」
「あぁ。だから心配ない」
「そう… 良かった。一緒に飲んだときにペトラがここまで酔ったことないから…」
ほっと胸を撫で下ろすマヤにエルドも声をかけた。
「オルオの言うとおり。俺らで飲んだらペトラがつぶれて、俺が背負って帰るのがいつものパターンなんだ。だからマヤのせいじゃないから」
「そそ、そういうこと! 本当に困ったやつだぜ」
と口ではあきれた様子のオルオの、ペトラを見るまなざしは優しい。
「オルオ、お前もすぐ酔いつぶれるからな…。お前を背負うのは俺なんだからさ。そこ忘れんなよ!」
「すんません、グンタさん…」
先輩に謝るオルオの顔は、叱られた子犬のそれだ。
「ま、今日はお前はつぶれなさそうだから許す!」
グンタが笑えば、エルドもその端正な顔をほころばせた。
「そうだな、オルオは今日はつぶれてない。このまま今日は飲まずに肉でも食っとけ。これは俺とグンタが引き受ける」
グンタが持っていたワインのボトルを手に取ると、グンタと自分のグラスにトクトクと注いだ。