第21章 約束
皆一斉にワイングラスを傾ける。
「ほんとだ、ジュースみたいで美味しい!」
そう叫んだかと思えば、ペトラは一気にグラスを空にした。
「確かに甘くて葡萄の果実のしぼり汁みたいだな」
エルドも感心する。
「……俺には少し甘すぎるがな」
グンタが言えば、すかさずエルドが笑った。
「こういう甘い酒も飲まないと、モテないぜ?」
「別に、酒はモテるために飲んでねぇわ!」
「ははは」
しばらく二人は気心の知れた者同士の会話を楽しんでいたが、ふと向かいに座っているペトラとマヤの様子に気づいた。
ワインのボトルを抱えこんだペトラの腕を、マヤが引っ張っている。
「ペトラ、もうやめといた方がいいって」
「大丈夫! こ~れ~、ジュースと一緒じゃない。こんなんで酔っちゃったの? あはは、マヤってお酒弱いんだね~」
「ついつい飲みすぎちゃうんだって!」
ペトラは腕を引っ張るマヤにかまわず手酌でグラスを満たすと、ぐいっと一気に飲み干した。
「おい、ペトラ。そのへんでやめとけ」
声をかけてきたエルドを、きっと睨む。
「いいじゃん、別に~。まだ大丈夫なんだから!」
「マヤ、こいつ何杯飲んだ?」
「四杯です」
それを聞いてグンタが身を乗り出して、ペトラからボトルを無理やり奪った。
「ちょっと! 何すんのよ!」
「お前、酒弱いんだからもう飲むな」
「何よ、ケチグンタ! クリクリ栗頭!」
「……おい、オルオ。ペトラのこのざまは、お前の責任だ」
まるで栗のようなとんがり坊主頭のグンタは、酔っぱらいに説教しても仕方がないことは重々承知だ。
「すんません!」
急いで頭を下げてから、オルオはペトラの肩を小突いた。
「おい! おい! いい加減にしろよ」
エルドとマヤに飲むなと言われ、グンタに酒を奪われ、オルオに肩を揺さぶられたペトラは怒り心頭に発した。