第21章 約束
「何? 葡萄酒?」
「うん。マヤがね、あまりの美味しさにグイグイ飲んで酔っぱらったやつ」
ペトラの説明を聞いたエルドが興味を持った。
「俺も飲もうか」
相棒のエルドが飲むなら俺も、とグンタ。
「よし、じゃあ注文しよう」
エルドは右手を上げて店員を呼んだ。
「 “フルーティーワイン・エスメラルダ” マグナムボトルで。それと森林鶏の骨付きから揚げとチーズスティック」
「かしこまりました~♪」
まるで歌うように軽やかな店員が去った途端に、マヤがエルドに。
「エルドさん! マグナムボトルって量、多くないですか? 私この前、飲みすぎちゃって…」
「大丈夫大丈夫、俺とグンタで飲むから。な?」
話を振られたグンタは、にやりとうなずく。
「あぁ、酒だったらなんでも大歓迎だ」
「じゃあ、お二人にお任せしますね」
そんなやり取りをしていたら、“フルーティーワイン・エスメラルダ” はすぐに運ばれてきた。
「こちら、“フルーティーワイン・エスメラルダ” マグナムボトルになりまーす!」
威勢の良い声とともにテーブルにどんと置かれた通常サイズの二倍の大きな瓶。
「来た来た!」
早速ペトラが瓶を手に取り、
「エルドさん、どうぞ!」「はい、グンタさんも!」
と、次々に注いでいく。
「マヤと…、私ね…。よし! じゃあ、あらためて乾杯!」
ワイングラスを掲げたペトラの隣から怒声が飛ぶ。
「おい! 俺にも注げよ!」
次の瞬間ペトラは、真顔でオルオの方に振り向くと辛辣な言葉を放った。
「真剣に忘れてたわ。手酌でお願い」
「……ったくよ~!」
ぶつぶつと文句を言いながらも、大人しく言われたとおりに手酌でワインを自分のグラスに注ぐ。
オルオが注ぎ終わるやいなや、ペトラは再び乾杯の音頭を取った。
「では! マヤおすすめの葡萄酒で乾杯~!」
高らかに叫ぶと、横のマヤのグラスに自分からカチンと合わせにいった。