第21章 約束
「幼馴染みはいました。マリウス・ディーン、同じ班でした」
………。
エルドもグンタも調査兵団の一員として “いました” と過去形で語られることが何を意味しているかは、痛いくらいにわかっている。
「マリウス…。あぁ、ミケさんの補佐だった…」
グンタがつぶやけば、エルドも言い添える。
「そういえばマヤが、食堂で一緒にメシ食ってるの見たことあるな。そうか、幼馴染みだったのか…」
「はい」
しんみりとしてしまった空気にマヤは、口にしなくてもエルドとグンタがマリウスが亡くなっていることをわかっていると知る。
「……いい友達でした。でも、もう大丈夫ですので…」
意識をして口角を上げると、努めて明るい声を出した。
「ごめんなさい、せっかくの飲み会なのに暗くなっちゃいましたね」
「いや、訊いたのは俺たちだし」「こっちこそ、ごめん」
「そんな! 謝らないでください」
マヤは顔の前で手を振ると、テーブルに目を配った。
「あっ グンタさん、もうエールが空じゃないですか。頼みましょうか」
「そうだな、肉も追加するか。俺らが食べる前にオルオが食いつくしたみてぇだし」
「すんません」
恐縮しているオルオにペトラが。
「ほらー! 言ったでしょ!」
マヤが、あっ!と何かを思い出した顔をする。
「ペトラ! 前に話した葡萄酒!」
「あ~! そうだそうだ、それ飲まなきゃ!」
二人はメニューを覗きこんだ。
「どれだろ…?」「これかな?」
メニューには、マヤがあのとき夢中で飲んだ葡萄酒らしきものは “フルーティーワイン・エスメラルダ” しかない。サイズはダブルマグナムボトル、マグナムボトル、フルボトル、ハーフボトル、グラス。
「美味しくて飲みすぎちゃうから、ボトルじゃなくてグラスにした方がいいと思う」
「え~、でも割高じゃん。オルオ! あんたも手伝ってくれるでしょ?」