第21章 約束
……でも、この流れで兵長を無視することなんてできない…!
勝手に誘っても、きっと誰も文句は言わない… はず…。
マヤは思い切ってリヴァイを誘ってみた。
「あの… もしよかったら、兵長もご一緒に…」
「いや、いい」
「……そう… ですか…」
何度リヴァイの拒絶の言葉である “いや、いい” を、この先聞くことになるのだろうか。勇気を振り絞って誘ったのに、あっけなく断られてマヤは肩を落とした。
「そう落ちこむな。マヤ、俺がリヴァイの代わりに行ってやろうか?」
ミケの優しい声に思わず顔を上げたが、すぐに思い出した。
「分隊長、今日は団長と約束があるって言ってたじゃないですか」
「……そうだったな。すっかり忘れていた」
「もう…! 忘れないでくださいよ…。それにそんな簡単に忘れ去られて、団長がお気の毒です」
「はは、そうだな」
「ふふ、そうですよ」
笑い合うミケとマヤの間に流れる空気を切り裂くように、リヴァイは立ち上がった。
「リヴァイ、帰るのか?」
「あぁ」
そのまま振り返ることもなく執務室を出ていった。
扉が完全に閉まったあとにミケがマヤの方を見ると、案の定しょんぼりとした様子でいる。
「マヤ。リヴァイは用事でもあったんだろうよ、気にするな」
「はい…。わかってます、そんな急に誘われても困るでしょうし…」
「なら、いいじゃないか」
それでもなお、落ちこんだ様子のマヤに訊く。
「何がそんなにショックなんだ?」
「……断られたこともなんですけど、それ以前にお誘いしてしまったことに自己嫌悪です。急に帰っちゃったのも、私のせいかと…」
……いやそれは違う。きっとまた、妬いただけだろうな。
ミケは心の中でそう思いながら、壁の時計を見た。
「元気を出せ。休憩は終わりだ。今日は早めに切り上げるから、みんなで楽しく飲んでこい」
「……了解です」
慰めてくれるミケに、これ以上心配をかけてはいけないとマヤは少し無理をして笑顔を作り、テーブルの上の食器を片づけ始めた。