第21章 約束
「兵長、すごいです!」
マヤは胸の前で両手を合わせた。
「明日…。確かに私たちは、明日を信じて戦って…。ううん、信じてないと戦えないんだわ…」
調査兵は皆、巨人を撃滅し人類が自由になる明日を信じて戦っている。
……さすが兵長だわ。きっと誰よりも “明日” を信じてるから、答えがすぐにわかったのかな…。
私も輝かしい明日を信じて戦いたい。兵長と一緒に…。
そんなことを頭の中で考えているマヤは、すっかり調査兵の顔になっている。
「明日といえばマヤ…」
ミケが何かを思い出したかのように話し始めた。
「調整日だったな」
「はい。あ、そうだ分隊長、今日の夜みんなで “月夜亭” に行くんです」
「ほぅ、誰と?」
「明日が調整日のリヴァイ班の皆さんとです」
リヴァイ班と聞いて、リヴァイ本人のこめかみがぴくりと動く。それを横目に見ながらミケはにやりと笑った。
「リヴァイ、今夜はマヤらと飲み会だったのか。知らなかった」
「いや… 俺は違う」
慌ててマヤが付け足した。
「すみません! リヴァイ班ですけど、兵長以外で…。エルドさんとグンタさんとオルオとペトラです」
………。
リヴァイの表情のない顔が怖い。
マヤは、しまったと焦り始めた。
先ほど兵長を仲間外れにしてはいけないと思ったばかりなのに、今自分が発言した内容はどうだ。
上司と部下だから、普段気軽に一緒に飲みに行こうという関係ではないが、こうやってわざわざ参加メンバーの名前を口にしてみれば、リヴァイ班と飲みに行くと言いながら兵長ひとりだけ声すらかけていないというのは…。
しかしそもそも声をかけてきたのはエルドさんであって、そのエルドさんが兵長を呼んでいないのであれば、今ここで私が焦ったり、誘ったりするのは違う気がするし…。