第20章 想う
「それで…、壁外調査で巨人に襲われて意識を失って…。目覚めたら兵長がいて。また巨人の恐怖に囚われた私に “俺が守るから大丈夫だ” って言ってくれて。兵長は兵長なんだから、部下を守るのは当たり前のことなのに。なにげない… そんな言葉に苦しくなるの」
ペトラは優しい目をして、うんうんとうなずきながら聞いている。
「きっと好きなんだって気づいたら、もうそれは間違いのない確かな想いになって心にあふれて…」
マヤの頬が染まっていく。
「……前にペトラも言っていたけど、兵長に本気になっても自分が辛いだけだってわかってる。だからおつきあいしたいとか、そういうんじゃないの。それに恥ずかしいし誰にも知られたくないなって…。想ってるだけでいいの」
「そっか…。だからファンだって公言して好きだっていうのとは違うってことなのね」
「うん…。でも違うっていうのもなんか違う気がして。そう考えていること自体も違うんじゃないかって…」
もはや禅問答のようなことを言い始めたマヤの小難しい表情を見て、ペトラはくすりと笑った。
「もう、なに言ってんのか意味不明だよ! 大体さ、マヤはなんでも真面目に難しく考えすぎなのよ。私の好きとマヤの好きは違って当然だし、どっちの好きが正解って訳でもないんだし。それぞれの “想い” でいいんじゃないかな?」
「……うん」
「それに私の好きだってこの先、誰にも言いたくない知られたくない! ってなるかもしれないし、逆にマヤが拡声器で “私は兵長が好きなんです! さぁ みんなも一緒に追いかけましょう!” って叫び散らす日が来るかもよ?」
「……それはないと思うけど」
マヤはペトラの極端な意見にたじたじになりながらも。
「でもそうだね、想いは人それぞれだし、色んな想いがあって、それにきっと時の流れによって、想いも変化していくんだろうね。だってこんな風に兵長のことを好きになる日が来るなんて思ってもなかったもん…」