第20章 想う
「いや待って、ペトラ。兵長が私をどうとか… そういうのじゃなくて。私が勝手に意識しちゃってるだけで…!」
慌てるマヤを目の前にしながら、ペトラの意識はあのとき食堂で見かけた兵長の表情を思い出していた。
……やっぱりあのときの、ざわざわした気持ちは間違ってなかったんだ。
「マヤ、もしかして私に遠慮してる?」
「え?」
「確かに私は兵長が好きだし、兵長派だとかファンだとか言ってるし、気を遣うだろうけど大丈夫だよ? もうほんとに自分でもね、びっくりするくらい割り切った感じがあるんだ… あの夜のあとから」
……あの夜…。
ペトラが泣きながら部屋に来た夜。
リヴァイ兵長が “女なんて抱きたいときに抱ければいい” と思っていると知ってしまった夜。
マヤは失恋しちゃったと泣きじゃくっていたペトラの顔を思い出していた。
……あの夜を境に、ペトラの兵長への想いは変わった… の?
オルオのおかげで笑顔が増えたのは知っているけど、心の中まではいくら親友でもはっきりとはわからない。自分の気持ちすらわからないことが多いのに。
「だからもし私に気を遣ってるんだったら、そんな必要ないから」
「うん…。気を遣ってるっていうか…。なんて言えばいいんだろ」
マヤは少しずつ話し始めた。
「ペトラの言う “あの夜”、私もショックだった、兵長の言葉が…。少し話すようになって、いい人に思えてたから余計に。次からどんな態度で会えばって思ってたのに休憩時間に全然来なくなっちゃって…」
そこで黙ってしまったマヤを、ペトラは明るくうながした。
「うん、そうだったね。前にそう言ってたの、覚えてるよ。それで?」