第20章 想う
真剣な声色に何かを感じたのか、ペトラも少し緊張した様子でひとこと。
「……何?」
「うん、あのね…」
いざ気持ちを伝えようとすると、何から話せば良いのか…。
「……リヴァイ兵長のことなんだけど…」
わずかにペトラの薄い茶色の瞳が揺れる。
「兵長が… 何?」
「……好き… なの」
「へ?」
ペトラが拍子抜けした声を出したので、
「え?」
マヤも間の抜けた声で訊き返した。
「好きなのはわかってるよ? ほら一緒に頑張ろうって、なんなら兵長派代表を譲ってあげるって言ってるじゃん」
「あ…、いや そうなんだけどね。そうじゃなくって…」
一生懸命に言葉を探しているマヤの少し赤い顔をじっと見ながら、ペトラは辛抱強く待った。
「兵長派とか… ファンっていうのはちょっと違う感じなの。あっ、否定するつもりじゃないんだけどね…。ごめん…」
「別に謝らなくていいよ。……それで?」
「……兵長のことが気になるの。ちょっと目が合ったら苦しくて、目を逸らされても苦しくて。最初は自分でもよくわからなかったけど、今ははっきりとわかるの。いつの間にか… 兵長を好きになってたんだって。この気持ちは誰にでも言えることじゃなくて…。でも、ペトラには内緒にはできないなって…」
「そっか」
一息に気持ちを吐き出したマヤに、ペトラは笑いかけた。
「兵長のこと、本気で好きになっちゃったんだね」
「うん…」
「正直に言うとさ、いつかこんな日が来るんじゃないかって思ってたんだ」
「え?」
ペトラの言葉に驚いてマヤは思わず顔を上げる。
「いつだったか…、兵長が食堂でマヤを見つめてたことがあったじゃん? あのときから何かが変わるんじゃないかって、そんな気がしてた」
「それってペトラがハンカチを忘れて私が兵長に渡しちゃったとき?」
「そう」
「あのときは全然好きとかじゃなかったよ?」
「うん、わかってる。マヤはそうだろうけど、兵長の方はどうだろうね」