第20章 想う
ペトラの “モテモテ” なる言葉に、目が点になる。
「な… 何を言ってるの…」
「言葉のまんまだけど? やっぱあれかな~。マリウスがいなくなったから伝えやすくなったのかな?」
………。
突如よみがえる壁外調査前夜。
ただの訓練兵時代からの同期だと思っていたザックからの、思いがけない告白。
そうだ、あのときザックは言っていた。
……マリウスの代わりにつきあえないかなと思ってるんだけど。
モテているとかそんなんじゃないけど…。
あの夜のことをペトラに話す訳にはいかない。
ザックのことでもあるんだし、それに兵長だって言っていた。
……今夜この場所でのことは誰にも言うな。
考えこんでしまっているマヤに気づいたペトラは慌てて謝った。
「あ、ごめん! マリウスのこと、こんな風に言うのは良くないね…」
「ううん、大丈夫。でもペトラ、ジムさんは一旦置いといて、ラドクリフ分隊長に限って好きとかそういう意味でお花をくれたんじゃ絶対ないよ?」
「うーん、まぁ… 確かにね。森のくまさんみたいだもんね。恋とか関係なさそう」
「失礼だよ、ペトラ」
「あはは」
「だから全然モテてないからね?」
「んー、でも兵長にお姫様抱っこしてもらってたし、なんか最近マヤのまわりっていい感じだよね?」
ペトラの口からまたもや出てきた “兵長” にドキッとする。
……そもそも今夜、ペトラを誘ったのは “想いを打ち明ける” ため。
伝えなくちゃ。
ううん、伝えたい。大切な友達だから。
「私がお見舞いをもらえたり兵長に助けてもらって…、ペトラの言う “いい感じ” なのは、巨人に襲われたってのがあるんだからね。そこを忘れないでよ?」
「それはそうだね。巨人にやられるのはやだな…」
「でしょ? でもペトラは強いから大丈夫よ」
「そうかな」
「うん。だってリヴァイ班じゃない。うちの後輩の子らもかっこいい、憧れるって言ってたよ」
「えっ ほんと? なんかやる気出る! 訓練頑張ろうっと!」
嬉しそうにこぶしを握っているペトラに、マヤはついに切り出した。
「ねぇ ペトラ。聞いてほしいことがあるの」