第20章 想う
「なぁに?」
「あれ」
ペトラがピシッとまっすぐに指さしたのは、机に飾られた黄色のガーベラ。
「単刀直入に訊く。兵長にもらったんじゃないでしょうね?」
「え!?」
いきなり出てきた “兵長” に、意味がわからずマヤは目を白黒させた。
「どうしたの、ペトラ。急に兵長とか言い出して」
「だって今まで花なんか飾ってたっけ? マヤって土いじりは好きだけど、部屋に花を飾ってなくない?」
「あぁぁ… うん。切り花より自然に咲いている花の方が好きだから」
「でしょ? なのに…」
疑わしげな瞳でじっと見つめてくる。
「あのね、ラドクリフ分隊長がお見舞いにくれたの」
「……なーんだ。でもよく考えたら、花=ラドクリフ分隊長だわね…」
先ほどマヤが給湯室に行っている間にガーベラを見て、勝手にリヴァイ兵長からの贈り物ではないかと妄想していたペトラは、真相を知ると途端に “面白くもなんともない” とがっかりした様子で肩を落とした。
「そう、花と言ったらラドクリフ分隊長でしょ? でね、花言葉も教えてもらったんだけどね。この花… ガーベラの花言葉は “希望” と “常に前進” なんだって!」
「へぇ、そうなんだ。いい言葉だね」
「うん。だからね、あんまり部屋に花を飾ったりしない方なんだけど、こうやって言葉も一緒に添えてもらったらね、この元気な黄色の可愛い花が目に入るたびに “頑張ろう” って気持ちになるの。切り花もいいものだなって思った」
机の上のガーベラに微笑みながらそう語るマヤを見て、ペトラも同意した。
「確かに “希望と前進” だなんて、うちらのためにあるような花言葉だね! でも…」
「……でも?」
「私はお見舞いにもらうなら、“花より団子” ならぬ “花よりりんご” だなぁ!」
食い気に走るペトラ。
「もう、ペトラったら!」
「いいじゃん、マヤは両方もらえてさ! なんかずるい!」
「そんなぁ…」
「あははは、冗談だよ! でも、うらやましいのはホント! なんかモテモテじゃん」