第20章 想う
「じゃあジムさんは、お見舞いにりんごをくれただけでなく、昼食にも出してくれてたってことなんだね?」
「……そうなるね…」
「ますます決定だね! ジムさんがマヤを好きだって話!」
「……あはは…」
そうだねとも、そんなことないとも言えず、マヤは曖昧な笑顔を浮かべるしかなかった。
「ねぇ ペトラ、一切れずつ食べよ?」
と、皿の上の二切れのりんごを指さした。
「いいの? マヤ、まだ一切れしか食べてないのに」
「うん」
「というかマヤへのお見舞いなのに私がほとんど食べたって知ったら、ジムさんに殺されそうだけど?」
「あはは、でも私はこうやってペトラと一緒に食べられて、それが楽しいから」
「……そう? まぁ、そういうことならいいか。じゃあ遠慮なく!」
ペトラはにんまりと笑うと、フルーツピックでりんごを突き刺した。そして口に放りこむと気持ちの良い音を立てる。それを見たマヤも同じように。
しゃりしゃりしゃりしゃり。
「美味しいね」「ほんと!」
最後の二切れを美味しく分かち合った二人は、幸せな笑みを交わした。
紅茶を飲みながらペトラがつぶやく。
「りんごを食べてから紅茶を飲むと、なんか美味しさが倍増する気がするわ…」
「そうね。りんごとブレンドした紅茶もあるくらいだから相性がいいんだと思う」
「あ~、幸せ!」
「うん、そうだね…」
紅茶もりんごも美味しい。大切な友達と一緒だと、もっと美味しい。
マヤは心に広がる幸福な気分にひたりながら、軽く目を閉じた。
「ところで、ちょっと訊きたいんだけど」
ペトラの声に引き戻されてマヤが目を開けると、くりくりとした大きな薄めの茶色が覗きこんでいた。