第20章 想う
すごい勢いで質問してきたかと思ったら勝手に答えを出して満足し、二切れ目のりんごをしゃりしゃりと食べている目の前の友に、マヤは笑いがこみ上げてきた。
「もう、違うよ? ジムさんが来てくれたんじゃない。私が食堂に行ったときにくれたのよ」
「え~、どっちでもいいよ! 同じ同じ。ジムさんが医務室に行ったかどうかでなくって、マヤにお見舞いのりんごをあげたことが重要なんだから」
「え、そうなの?」
「そうだよ! あれだね、ジムさんってマヤのことが好きだったんだね。全然知らんかったわ」
三切れ目のりんごを頬張るペトラ。やっと最初の一切れを食べ終わったマヤは苦笑いをする。
「ペトラまでそんなこと言って…」
「………!」
しゃりしゃりとりんごを噛み砕いていたペトラが目をむく。
「ちょっとマヤ! までって!?」
「ん?」
「今、ペトラ “まで” って言ったじゃん! “まで” って!」
ペトラの勢いに圧倒される。
「……言ったけど…?」
「だーかーらー! 私以外にも、ジムさんがマヤのことを好きだって言った人がいるってことでしょ!?」
「あっ…、うん」
「誰よ!?」
「……マーゴさん」
右手のフルーツピックごと天井に向かって突き上げながら、ペトラは叫んだ。
「ほら! やっぱそうなんじゃん! ジムさんが好きなの決定じゃん!」
「いや、あのねペトラ。マーゴさんにも言ったんだけど、違うと思うよ?」
「なんで!?」
「なんでって、ジムさんが私を好きだなんて… そんなの信じられないし」
「はぁ? なに言ってんの? いい?」
ペトラはピシッとフルーツピックをマヤの前に突き出した。