第20章 想う
均等に切られたくし形のりんご。
「いただきまーす!」
手にした銀のフルーツピックで一切れのりんごに狙いを定め、しゃりっと突き刺したペトラは一気に口に放りこむ。
しゃりしゃりしゃりしゃり。
「ペトラったら、ほっぺがふくらんでるわよ!」
「あはひゃ、らって、おいひいから!」
しゃりしゃりしゃりしゃり。
口いっぱいにりんごを頬張って、良い音をさせながら食べているペトラの様子にマヤは思わず微笑んだ。そしてあらためて “いただきます” と、りんごに手を伸ばす。
しゃりしゃりしゃりしゃり。
「うん、美味しい!」
「なかなか上等のりんごじゃない? 買ったの?」
フルーツピックで二切れ目を突き刺しながら、ペトラは訊いてくる。
「ジムさんがくれたの、お見舞いにって」
二切れ目のりんごにかぶりつこうと、大きな口を開けていたペトラはその手を止めた。
「……ジムさんって食堂の?」
「そう」
「……マーゴさんの親戚の?」
「なんだ、ペトラ 知ってたんだ。私ね、最近知った」
「前にね、マーゴさんから聞いたことがあって… って! そんなことはどうでもいいよ。なんでジムさんがお見舞い? 医務室に来たの? というかお見舞いに来るほど仲いいんだっけ?」
右手のフルーツピックに刺さったりんごをぷるぷると震わせながら、ペトラは質問の嵐を浴びせてきた。
「え、あ、そうじゃなくって…」
何か言いかけたマヤのことなどおかまいなく、急に思い出したことを叫ぶ。
「あぁぁ! そうだ、思い出した! ジムさんさ、なんかすごい剣幕でオルオの胸ぐら掴んでたわ! それでか!」
ひとりで納得して大きくうなずいたペトラは、振りかざしていたりんごを口に入れた。
しゃりしゃりしゃりしゃり。
「いや~ こんな美味しいりんごを持って医務室にまでお見舞いに行くなんてジムさんもやるじゃん!」