第20章 想う
「分隊長に気に入ってもらえたみたいで良かった…」
「そうだな、気に入った。でもお前の淹れた紅茶はどれも美味いと思うがな」
「ほんとですか?」
「あぁ」
と、そこまで会話をしてから、ミケはこれ以上つづけることは部屋にいるもう一人の人物の機嫌を損ねそうだと思い、口をつぐんだ。
もともと無口であるからして、ミケが “あぁ” と言ったきりぱたりと何も話さなくなっても、マヤにはなんの違和感もなかった。
どちらかといえば、いつものことだ。
マヤはとても幸せな気分に包まれて、自然に口元が緩んでしまった。
……昨日は怒らせたかもしれないと心配していたけれど…。
リヴァイ兵長が久しぶりに…、本当に久しぶりに紅茶を飲みに来てくれた。
ミケ分隊長と二人きりの休憩もいいけれど、やっぱり兵長も一緒だと嬉しい。紅茶の話をするのは楽しい。この時間が大好き。
ふっと視線を感じて顔を上げると、じっと見つめてきていた兵長と目が合う。
いつもなら恥ずかしくて視線を逸らしてしまっていたが、今なら言える気がする。
幸福な想いにあふれている今なら。
「兵長。一緒に紅茶を飲めて… 嬉しいです」
その言葉が部屋に流れた瞬間、わずかにリヴァイの目が見開かれた。
ドクン。
心臓が跳ねた。
マヤの顔を見ていた。
ミケと楽しそうに話しているのは少々癪にさわるが、今日のところは見逃してやる。昨日のミケの言葉がなければ、今この場所に自分はいない。
マヤとひとつのソファに座っている。
マヤの淹れた紅茶を飲み、堪能し、互いの紅茶愛を確認し合う。ミケの質問に黙ってしまっていたマヤの代わりに俺が答えるだなんて、まるで共同作業みたいで悪くねぇ。