第20章 想う
「ええ、そうです。あとは9月から11月に摘まれた秋摘みのもので “オータムナルフラッシュ” です。これはシーズン最後の収穫になるので茶葉がもっとも成熟していて、風味にまろやかなコクがあるのが特徴なんです」
「ほぅ…、色々あるんだな」
「はい、ダージリンひとつとってもこうだから…。紅茶の茶葉はダージリン以外にもいっぱいあります。すごく奥が深くてひきこまれます」
マヤは心の底から紅茶が好きだという想いを顔いっぱいに表していた。
そんなマヤを微笑ましく内心思いながらもミケは、もうひとつ質問をする。
「ところでマヤ、さっき確か “さすが女王” と言っていたと思うんだが…」
「あぁ、はい! 言いました。それはですね、セカンドフラッシュは、その香りと風味だけではなく色がもっとも紅茶らしい美しさに満ちているんです。ほら…」
そう言いながらリヴァイの前に置いてある客人用カップの紅茶に、マヤは視線を向ける。なぜなら自身のマグカップは青地なので色味が白地のものよりわからないからだ。その点、客人用のカップはシンプルな白色である。
「この紅茶と言われたらぱっと思い浮かぶ真紅に輝く優美な色合い。この完璧な紅茶色に濃厚な味わい、深みのある甘いコクと爽やかな渋みの素晴らしいバランス、そして果実のようなふくよかな香り…。すべてが気品に満ちている “セカンドフラッシュ” は “紅茶の女王” と呼ばれていて一番の人気なんです」
マヤの力説にミケは思わず手を叩き、駆け寄って抱きしめて匂いを思いきり嗅ぎたい気分になったが、先ほど笑い合っただけで若干機嫌が悪そうな雰囲気を醸し出していたリヴァイのことを考えて自制した。
「そうか、よくわかった。この女王と呼ばれる紅茶は確かに美味いな」