第20章 想う
「……それは…」
マヤは答えに詰まってしまった。
……そう言われたら、なんでだろう?
子供のころから父に紅茶のあれこれを教えてもらってきたが、ブレンドティーのブレンドする理由なんて…。
今言った “香りや風味を調整するため” としか…。
でも確かにそのままで美味しいんだから、なにもわざわざブレンドしなくても。
………。
下を向いて黙ってしまったマヤを横からじっと見ていたリヴァイが、代わりに答えた。
「確かにブレンドする必要なんかねぇような茶葉なんだが、栽培する年によって出来具合にばらつきが出るんだ。だからブレンドすることで一定の香りや風味を提供しつづけられるし、価格だって安定する」
「なるほどな。安定供給のためか」
「それにブレンドすることで茶葉独特の個性は消えてしまう一方、複雑な深みが生まれる。それはそれで美味ぇからな…」
「ほぅ…」
薄めに生えているあご鬚に手をやりながら、ミケは納得した様子でうなずいた。
「なかなか興味深いものなんだな」
マヤはうまく返答できなかった自分に代わり答えてくれたリヴァイを、感謝と尊敬の気持ちをこめて見つめた。
するとミケの方を向いていたリヴァイは視線に気づき、マヤを見つめ返す。
………!
その瞬間にかすかにリヴァイの瞳に、紅茶愛好家の連帯意識のような優しさが浮かんでいて。
マヤの胸はトクンと跳ねた。
……私が答えられなかった質問を、代わりに兵長が答える。なんだか共同作業みたいで…。
ひとり顔を赤らめていると。
「……ブレンドする意味はわかった。マヤ、それで?」
ミケが話のつづきをうながしてきた。