第20章 想う
「………」
マヤは言葉を失った。
“いや、いい” は前にも聞いたことのある拒絶の言葉。
理由もわからず避けられていると感じていたときに執務室の前で。
勇気を出してお茶に誘えばリヴァイの口から冷めた声色で “いや、いい” と。
……あのときと同じ。また… 拒まれた…。
血の気が引くという言い回しがあるけれど、きっと今… 私の顔はそうなっている。
マヤがショックを受けて立ちすくんでいると。
「俺はこれをもらう」
その声に気づいてリヴァイを見ると、一杯多めに淹れるための客人用のカップを上から掴んでいた。
「……あ、でもそれは…」
人に飲んでもらうために淹れたものではない。誰かに飲んでもらうのならば、きちんと淹れたものを飲んでほしい。
……そうだ!
「こちらを飲んでください」
マヤはひざまずくと、自分の青地に白い鳥の羽ばたくマグカップを差し出した。
「……いや、今日はこれを飲む」
リヴァイはそうつぶやくなり、カップに口をつけた。
「……いい香りだな」
「はい、今日の茶葉は…」
「待て」
「………?」
「当てる…」
リヴァイは目を閉じて、カップから立ち昇る湯気を吸いこむ。まぶたがぴくぴくと動いたと思えば確信したかのように軽くうなずいて目を開けた。そしてあたかも確認するかのようにもう一度カップに口をつけ紅茶をゆっくりと飲む。
「……ダージリン、セカンドフラッシュ」
「当たりです!」
マヤは思わず叫んだ。
紅茶好きの兵長のことだから、ダージリンであることは当てるだろうとは思っていたけれど。
たったふたくち飲んだだけで、セカンドフラッシュだということまでわかるなんて。
……さすが兵長だわ!