第19章 復帰
「さすがマヤ! 私が見込んだだけのことはある! 現直属の上司のミケにも私にも配慮して、そして断っているのに断っていない、まさに優等生の答えだね!」
ハンジは大きくうなずきながら、さらに言い募る。
「ますます君が欲しくなったよ! でも今は捕獲班の班員でいてくれる現状で満足しようじゃないか。マヤ、これからもよろしく頼むよ!」
身を乗り出して右手を差し出してくるハンジにマヤは、
「私の方こそ、よろしくお願いします」
と力いっぱい握り返して、頭を下げた。
「マヤは手もちっさくて、なんだかスベスベしていい匂いもするし可愛いね~!」
そう言いながらハンジは握ったマヤの手を離す気配がない。
「……あの… ハンジさん?」
自身の手に頬ずりしそうなハンジの勢いに圧倒されていると…。
「ハンジ。マヤはそれでなくてもメシを食うのが遅いんだ。手を離してやってくれ」
「へ?」
ミケの言葉にハンジが間抜けな声を出してテーブルを見渡すと、確かにあとから来た者よりマヤの昼食は多く残っている。
「あらら! ホントだ!」
さっと握っていた手を離すと、マヤに急いで食べるようにとうながした。
「……本当にマヤは食べるのゆっくりだよな」
タゾロがそう言ったが、その声はあきれているといった様子はなく、むしろ妹を見守る兄のような風情があった。
「あはは…、すみません」
「……いいから、お前らしくゆっくり食べろ」
「はぁい」
タゾロとマヤの会話を眺めていたミケだったが、つっと立ち上がった。
「タゾロ、行くぞ。マヤ、午後の訓練に遅れないように」
「はい!」
「え~! こんな可愛いマヤを置いてもう行っちゃうのかい? つれないねぇ、ミケチは!」
口を尖らせているハンジをじろりと見下ろした。
「用があるんだ。マヤの相手はお前がしろ。それからその変な呼び方やめろ」
「あははは!」「……すみません、ミケさん」
豪快に笑い飛ばすハンジの隣で、なぜか申し訳なさそうにしているモブリットが対照的だ。
「さぁ行った行った!」
ひらひらと手を振ってハンジは、ミケとタゾロを追い払った。