第19章 復帰
……鼻博士? 変人ミケチ?
敬愛するミケ分隊長への奇妙なあだ名にマヤは、ぷっと吹き出しそうになった。笑いをこらえているマヤに、ハンジは返事を催促してくる。
「ねぇねぇ、どうなの? マヤもホントはうちに来たいんじゃない?」
「えっと…、あの、正直に言うと…」
「うんうん、人間正直なのが一番だよ! さぁ 本音を吐き出すんだ、マヤ!」
とっくに食べ終えた隣のタゾロとその向かいに座るミケが、密かに自分の返答に注目しているのがひしひしと感じられる。そしてハンジの隣のモブリットも穏やかな笑みを浮かべてこちらを見ている。
マヤはその状況を認識した途端に緊張してきた。
……正直な気持ちを言うしかない。嘘偽りのない言葉で。
「巨人の捕獲班は怖い目には遭いましたけれど、やりがいのある任務だと思います。これからも捕獲班が結成されるときには参加したい…」
「ひゃっほー!」
マヤの返答に両腕を振り上げて喜ぶハンジ。そんな姿を見つめながら、さらに答えるマヤの瞳は誠実な光を放っていた。
「でも… ミケ分隊長のもとで訓練したり戦ったり。そして最近始めた執務のお手伝いも、すごく充実しています」
ミケが感慨深そうな様子で、フンと小さく鼻を鳴らした。
「それは…、ハンジさんのところに行っても、ラドクリフさんのところでもリヴァイ班でも…。どこの所属になってもきっと、やりがいのある仕事なのは一緒だと思います。だからこそ任命された場所で任務を成し遂げたい。もしエルヴィン団長に分隊の配置換えを命じられたら、そのときは従います」
胸を張って答えたものの、遠回しに第二分隊への移籍勧誘を断ったことにハンジが失望するのではないかとマヤは内心少し心配になってきたが、それは杞憂だった。