第19章 復帰
……え?
突然、目の前で始まった自分の交換交渉に驚いて、マヤは飲みかけのスープでむせてしまった。
こほこほと咳きこむマヤをちらりと見ながら、ミケは即答した。
「断る」
「え~! なんでぇ!」
「当たり前だろ、お前にとって喉から手が出るほど欲しいマヤは、俺にとっても大事な部下なんだ」
……ミケ分隊長!
マヤはミケがハンジに断りを入れたこと、そしてはっきりと大事な部下だと言いきってくれたことが嬉しくてたまらなかった。
「そりゃそうだろうけどさ…、そこをなんとか!」
拝むポーズをしてみせるハンジを冷たく一瞥しながらひとこと。
「駄目だ」
「え~、ケチ! ミケがそんなけちん坊だとは思わなかったよ! これからはミケチって呼んでやる!」
「なんとでも言え、とにかく駄目なもんは駄目だ」
「……ちぇっ」
舌打ちをしたハンジだったが、何を思いついたのか目を輝かせてマヤに食いついてきた。
「そうだ! マヤ!」
「は、はい!?」
ミケの断りの返事に感激していたマヤは、ハンジの矛先が自分に向けられて思わず肩をびくっとさせた。
「マヤの気持ちが一番大事だよねぇ!?」
「はぁ… まぁ…、そうですね?」
しどろもどろで語尾が疑問形になってしまうマヤ。
「そうそう、そうだろ? で、どうなんだい? マヤはうちに来る気はあるかい?」
「えっ、いや…、その…」
どう答えれば良いかわからず、言葉に詰まる。
「こんな無口で、嗅ぎ魔の鼻博士で、背が高いだけの変人ミケチのところにいるより、うちに来た方が絶対いいって!」