第19章 復帰
「ありがとうございます、モブリットさん」
「ユージーンが気付け薬が効かないと言った時にはどうなるかとハラハラしたが…」
とモブリットが遠い目をすればハンジも、
「ほんとだよねぇ! あのときはユージーンが薬が効かないって言うし、リヴァイはマヤを抱き上げて部屋に強引に連れてくし、訳がわからなかったよ」
と食堂中に聞こえるような声を出すので、マヤは恥ずかしくて耳まで赤くなってしまった。
なんだか視線を感じてその方向に目をやれば、ハンジ分隊長の後ろにあるテーブルに座っていたのは、壁外調査の前日に告白をするんだとリヴァイ兵長を捜していた新兵の女子グループだ。
四人全員がハンジの “リヴァイがマヤを抱き上げて強引に部屋に連れていった” というパワーワードに反応して、目を見開いて凝視してきている。
その中でも特に、告白すると宣言していたメラニーの視線がじかに突き刺さってくるようにマヤには感じられた。
……いたたまれない…。
マヤは強い視線を避けるように下を向いた。
その様子にすぐに気づいたモブリットが、ハンジの肩をつつく。
「分隊長、みんなが見てます! 声を落として」
「なんで?」
「なんでって、マヤが恥ずかしがってますから」
「え~、いいじゃん。薬が効かなかったのもリヴァイが抱いたのも本当のことなんだし」
「分隊長! 言い方!」
黙ってハンジとモブリットのやり取りを聞いていたミケが、口を挟んだ。
「ハンジ、リヴァイが抱いたというのは変な誤解を生むからやめておけ」
「ん? そうかい?」
「あぁ」「そうですよ、分隊長!」
ミケとモブリットが同時に答えた。
……早くこの話、終わって…!
マヤはぎゅっと目をつぶって、ただ祈るしかできなかった。