第19章 復帰
「おはようございます!」
復帰の初訓練は、立体機動だ。
ミケ分隊長に言われたとおりに昨晩は早く床に入った。自分のベッドでぐっすりと眠ったマヤは、気分は爽快、体調はばっちりで自然に気持ち良く目覚めた。
いつもの朝よりかなり早い。そのまま食堂に行けば親しく話す兵士は見当たらず、新鮮な顔ぶれだった。
マヤが壁外調査で巨人に襲われたことは周知の事実なのだろう。皆がこちらを見ている気がする。
しかし普段に言葉を交わす関係にないため、誰も声をかけてこなかったし、マヤも気にせずに一人で朝食を美味しくいただいた。
そして今、訓練に備えて立体機動装置を保管してある倉庫にやってきたところを元気な挨拶に迎えられたのだ。
「ギータ! おはよう!」
マヤが笑顔で挨拶を返せば、ギータはそのそばかすだらけの顔を嬉しそうに紅潮させた。
「マヤさん、もう大丈夫なんですか?」
「うん、今日から訓練に復帰するの」
「そうですか。良かった…。オレ、心配で…」
胸を撫で下ろしている後輩にマヤが “心配をかけてごめんね” と言おうとしたとき背後から呼びかけられた。
「あ~! マヤさんだ!」
振り向けば、これまた後輩のジョニーとダニエルが駆け寄ってくる。
「もういいんですか?」「巨人にやられたって聞いたけど大丈夫っすか?」
「うん、もう平気よ」
「そうですか!」「良かったっすね!」
口々に復帰を喜んでくれるジョニーとダニエルに笑いかけた。
「二人ともありがとう!」
そして忘れずに、ギータにも。
「ギータもありがとう」
顔を赤らめたギータの肩をジョニーが叩く。
「ギータ! 取りに行くぞ」
立体機動装置を取りに倉庫に入った後輩三人のあとにマヤもつづいた。