第19章 復帰
今度こそ帰ろうとしたリヴァイの背中を再度ミケは引き留めた。
「それから…」
「まだあるのか」
心の底から嫌そうに振り返った。
「……休憩の時間にまた、マヤの紅茶を飲みに来てやってくれないか」
「……は?」
「なんか知らんが急に来なくなっただろ? それまで毎日のように来ていたのに」
「………」
押し黙ってしまったリヴァイの白く小さな顔を見ながら、ミケはつづける。
「もうマヤが悲しむ顔は見たくないんだ」
「……マヤが悲しむ?」
うつむいていた三白眼が、まっすぐにミケを射抜く。
「あぁ。お前が来なくなってからマヤはずっと気にしていた。だから飲み会で訊いてみろとアドバイスをしたんだ。でもあの夜マヤは酔っぱらってしまったしな…」
……そうだったな、覚えている。
リヴァイは声には出さなかったが、飲み会のことを思い出した。
あの夜、隣に座ったマヤが俺に放った質問は確か…。
「あ… あの! 兵長が休憩の時間に来なくなったのは… どうしてですか?」
ずきんと胸が痛んだ。
心の中がお前でいっぱいになって、自分を見失いそうになって。
だから以前の自分を取り戻すためにマヤよ、お前を避けただなんて言える訳がない。
だからあのとき俺は、マヤの言葉を聞こえないふりをした。
「なぁリヴァイ、お前がなぜ来なくなったのか、今となってはもうどうでもいい。マヤがこれから先、笑顔で美味い紅茶を淹れられたらそれでいいんだ。そのためにはお前が必要なんだ」
なぜかミケの声が少し淋しそうに響いて、リヴァイは心を動かされた。