第19章 復帰
……なんだ?
待てと引き留める暇さえなかった。
すぐにでも追いかけて、急変した顔色の理由を知るべきなのか?
わからない。
わからないし、身体はまだ熱気を孕んでいる。マヤの思いがけない態度に驚いて勢いはうしなってしまったものの強健なそれの余韻は、ただちにゼロになるものではない。
だが今はそんなことを言っている場合ではないし、めずらしくリヴァイは焦っていた。
そのとき視界に飛びこんできた数枚の書類。
それはなぜ提出してきたのか理解に苦しむもの。
……これは使える。
ミケの執務室に行く口実ができると、リヴァイは立ち上がった。淫らな肉体の熱は強靭な精神力でねじ伏せたあとだ。
書類を引っ掴むと隣の部屋へ。入るとミケが顔を上げた。マヤはいない。
「……リヴァイ、なんの用だ?」
ツカツカと机へ進むと、手にしていた書類を叩きつけた。
「出す必要のねぇもの持ってこさすな、要らん仕事が増えるだろうが」
するとミケは、ことさらにゆっくり机に投げつけられた書類を掴んだ。
「へぇ…」
意味ありげににやりと笑うと聞き取れないほどの小さな声で。
「口実… か」
ミケは内心、笑いが止まらなかった。
……俺はただ、マヤがリヴァイの部屋に行くためだけのきっかけに、この書類がなればいいと思っていたが。まさかリヴァイがここに来る口実にも使われるなんてな。
「おいてめぇ、何を笑ってやがる」
気づけば目の前に立っているリヴァイの機嫌が相当悪い。
「いや、別に…。ところでリヴァイ、意味のない書類を届けさせて悪かったな、要らぬ仕事を増やして。だが…」
砂色の長い前髪の奥に隠れた瞳が光る。
「こうやってわざわざ突き返しに来たら、余計に手間だと思うが」