第19章 復帰
さかのぼること数分。リヴァイは呆然と扉を眺めていた。
マヤが書類を持って執務室にやってきた。目を通せばミケからだという書類はクソみたいなもので苛立ったが、次に目を通したエルヴィンからのものは至極まともだった。
マヤが、すっかり元気になって目の前に立っている。
心の底から良かったと思い、その姿をあらためて見つめれば妙な気持ちになってきた。
艶やかなくちびるばかりに目が行ってしまう。いやでもあの夜の不埒な行動を思い出してしまい、不覚にも肉体が反応してしまった。
鼓動がうるさい、熱っぽい、全身の血液が沸騰して集中してしまう、ある一点に。
……執務室で一体何を考えているんだ、俺は。
情けない。気持ちを落ち着かせなければ。
マヤは何かを言いかけていた。
それはなんだ? 早く聞かせろ。そうすればきっと熱も治まるはず。
「どうした? 用があるなら早く言え」
なんとか精一杯冷淡にそう告げる。そして自身の状況をマヤに悟られないように足を組んだ。
うまくいったはずだった。
それなのにマヤは、途端に顔色を変えた。
今までは可愛らしく、かつ官能的でもあり美しく頬を薔薇色に染めていたのに。
俺の言葉を聞くなり、その愛おしい赤さはどこかへ飛び去ってしまった。青白くさえ見える。
その大きな琥珀色の瞳は今にも泣き出しそうに潤いをたたえ、目が離せずにいたくちびるは震えている。
……どうしたんだ?
マヤは少しの間、何かを考えていたようだったが、急に眉のあたりに決意を見せる表情になった。
そうして壁外調査で助けたことや昏睡状態のときに付き添ったことへの礼を口早に述べ始めると、最後は申し訳なさそうに謝って出ていってしまった。