第7章 リヴァイ班
エルドはペトラの薄い茶色の髪を見ながら答えた。
「……故郷にいるよ」
「そうなんですか…。なんとなく、いる気はしてました」
「そうかい?」
「はい。エルドさんは女の人に優しいから」
エルドは悪戯っぽく笑った。
「少なくともグンタよりは、女の扱いはマシなつもりだからな」
「あはっ」
ペトラもつられて笑う。
「どんな人なんですか?」
「そうだな…」
エルドはまたペトラの髪に目をやった。
「お前と同じ優しい色の髪で… いつも笑ってる」
「そうなんですね… 故郷にいるって… じゃあ、あまり会えないんですよね。会えないの… 辛くないですか?」
「そうだな…。そりゃ逢いたいさ」
エルドはペトラから視線を外し、肩越しに遠くを見る。
「でもま… 逢えない分、想いは強くなるもんだぜ」
ペトラは故郷の恋人を想うエルドの顔から目が離せなかった。
……同じだ…。
「私… 好きっていうか…、気になる人がいるんですけど…」
「うん」
エルドはペトラに視線を戻す。
「その人が今日、今までに見たことのないような顔をしていて。ずっとずっと気になって。その顔の意味を考えていたんですけど…」
ペトラはエルドの視線を受け止める。
「エルドさんも今、同じ顔をしました… 恋人を想うとき…」
「………」
「でも… そんなの信じられない、信じたくない」
ペトラはエルドに… というよりは、まるで独り言のように繰り返した。
「ペトラ…」
「……すみません。自分でもよくわからないんです。私がその人を好きなのかどうかも…」
エルドはしばらく考えていたが、ゆっくりと口をひらいた。
「ペトラ、人を好きになるのは素晴らしいことだ。俺はお前に、いい恋をしてほしいな」
「エルドさん…」
「……で、その好きかもしれない人ってオルオか?」
「違いますよ! 冗談きついです!」
「ははは」
「あはっ」
二人はひとしきり笑い合ったが、エルドは真面目な顔になった。
「俺で良ければ、いつでも話を聞くからな」
「はい!」
「メシ、食いに行こうか」
先に食堂に向かうペトラの後ろ姿を見ながら、エルドは立ち止まった。
……ペトラの好きかもしれない人って兵長だよな…。
兵長が恋?
まさかな。ペトラの見間違いさ。
エルドは即座に否定し、すぐにペトラに追いついた。