第7章 リヴァイ班
ハァハァハァ…。
リヴァイ班独自の基礎体力訓練 “地獄の基礎鍛錬” を終えた彼らは、さすがに全員息が上がっていた。
ペトラは膝を抱えて座り、グンタとオルオは大の字になって寝ている。
しばらく誰も口を利かなかったが、エルドが手をパンッと一回叩いてから叫んだ。
「起立!」
その号令に、皆立ち上がる。
「これにて訓練を終了する。解散!」
「はっ!」
よろよろと水飲み場に向かうペトラを、エルドは追いかけた。
「お疲れ」
「お疲れ様です~」
水飲み場に着いた二人は、とりあえずゴクゴクと喉の渇きを癒す。
「……ぷはぁっ!」
水を思う存分飲んだペトラが思わず出した声に、エルドは笑いながら応えた。
「はは、訓練のあとの水は最高だよな!」
「はい!」
二人は苦しい訓練を乗り越えた者だけが知る喜びを分かち合いながら笑った。
「ペトラ」
「はい」
「談話室に行くぞ」
「はい?」
ペトラの返事を待たずに、エルドは歩き出していた。
後頭部で結ばれたエルドの金色の髪を見上げながら、ペトラはあとを追う。
「待ってくださいよ~!」
追いつき、横に並んで歩く。
談話室は食堂の隣にある。四、五人のグループが五組ほど気楽に座って談笑できるようにソファとテーブルが適度に離されて配置されている。
主に夕食後就寝前の自由時間に利用されることが多いので、昼食前のこの時間は利用している者は誰もいなかった。
エルドは一番奥のソファに進むと、ペトラに座るようにうながした。
ペトラが腰を下ろしてから、自分も向かいに座る。
「……で…」
エルドは身を乗り出した。
「悩みを聞いてやる。どうして… あんな顔して走ってた?」
「あっ…」
ペトラはひとこと漏らすと、うつむいてしまった。
エルドはそんな彼女の様子を見てしばらく待ったが、痺れを切らした。
「……悪かった。話したくないならいいんだ」
立ち上がろうとするエルドに、ペトラは叫んだ。
「いいえ!」
その声にエルドは再び、腰を下ろす。
そして再度待った。
ペトラはうつむいていたが、顔を上げたときにはエルドに対する信頼感が顔に満ちていた。
「エルドさんは好きな人… いるんですか?」