第7章 リヴァイ班
食堂に入るとグンタとオルオがすでに半分以上、昼食を食べ終えていた。
彼らの隣に座ったエルドとペトラに、オルオは興味なさそうな様子を精一杯かもしだしながら訊いてきた。
「二人でどこ行ってたんすか?」
「オルオには関係ない!」
エルドは笑いながら訊き返す。
「気になるか?」
「いや全然!」
わずかに顔を赤らめ否定するオルオに、エルドは何も言わずに肩を叩いた。
しばらくはスープをすする音だけ聞こえていたが、一番に食べ終えたグンタが腹を大袈裟に叩いてみせる。
「あー 食った食った! ……ところで午後の訓練ってなんだっけ?」
「馬術だ。間違えんなよ」
エルドはニヤリと笑った。
グンタは以前に、馬術訓練と対人格闘訓練を間違えたことがあった。
厩舎に蹄洗場および馬術訓練をおこなう馬場は、対人格闘訓練をおこなう訓練場とは一番離れた場所にあった。
時間が過ぎても現れないグンタに、兵長の機嫌はどんどん悪くなる。
あのときグンタを探してこいと命じられたエルドは調査兵団の敷地内を駆けずりまわり、やっと馬場からもっとも遠い訓練場でぼーっと立っているグンタを見つけたのだ。
「もうあのときみたいなのは、ごめんだぜ?」
「わかってるって!」
グンタもニヤリと笑い返す。
グンタ・シュルツ。
エルド・ジンとともに、846年に調査兵団に入団した100期生だ。
一見大人しそうで真面目だけが取り柄に見えかねないが、気の置けない相手の前だととぼけたところのある結構天然な男だ。
それに対して同期のエルドは、その愛想の良さとハンサムな顔のせいもあってか軽そうに見られがちだが、実は真面目で仲間思いな男だ。
リヴァイ兵長もすぐにそれを見抜き、自身の代わりに指揮を任すことも度々ある。
エルド、グンタ、そして一期下のオルオにペトラ。
リヴァイ兵長にその実力を認められ、調査兵団特別作戦班、通称 “リヴァイ班” に指名された四人の若者たち。
「行こうか」
エルドが声をかける。
「はいよ!」「うぃーっす」「はぁい!」
昼食を終えたリヴァイ班は立ち上がった。
馬場に向かう彼らの背中は、信頼と友情という名の絆でつながれていた。