第19章 復帰
「ただいま戻りました…」
その声は、想像していたものよりも打ちひしがれていた。
今日の業務はこれまでと区切りをつけ、新聞をのんびりと読んでいたミケは思わず顔を上げた。
……どうした?
リヴァイに礼を述べ、ひとつやふたつ世間話でもして機嫌良く帰ってくると予想していた。
それなのに目の前のマヤは顔色も悪く、もともと小柄ではあるがひとまわり小さくなったようにすら見える。
「……元気がないようだが、何かあったのか?」
力なく執務机の前に立ったマヤはうつむいたままだ。
「リヴァイに礼を… 言えなかったのか?」
「いえ…、お礼は言ってきました…」
その返答に安心する。
「ならいいじゃないか。一体どうしたんだ」
「……兵長、忙しそうでした。それに気づかず、迷惑をかけてしまって…」
………?
ミケの脳裏に疑問符が浮かぶ。
たとえ忙しくても、マヤの来訪は歓迎するはずだが…?
素直になれなかったのか、リヴァイ…。
「大丈夫だ、マヤ。救った部下が元気になったんだ、喜んでいるだろうし、忙しくても迷惑になんか思わないさ」
……救った部下… だけの位置づけではないだろうがな…。
内心そう思いながらも、ミケは励ます。
「もしリヴァイの態度が素っ気なかったとしても、他意はないさ。気に病む必要はない。あいつの態度なんか、いつもそうじゃないか」
「………」
自身を励ましてくれる優しいミケ分隊長の声を聞きながら、マヤはこう思っていた。
……そうなんです、そうなんですけど分隊長!
私がリヴァイ兵長に特別な感情を抱いていなければ、仰るとおりなんです。
落ちこむことはない。傷つく必要もない。
ちょっと忙しいところにお邪魔してしまった。反省しなければ…! で済むのですが…、今は!
今は、私が兵長に普通じゃない想いを向けてしまっていて。
自分の失態が、とんでもなく気分を落ちこませて、立ち直れる気がしないんです…。