第19章 復帰
しばらくは互いに目もくれずに、たまりにたまった書類の処理に追われた。
ミケはマヤが分類した書類に目を通し、サインをしたり却下すべきものはまとめたり… そして新規の書類の作成も結構な分量があるので忙しい。マヤはマヤで、ミケからまわされた書類にサインや日付などの不備がないか、またミケの作成した書類の綴りのチェックなどを任されている。またあらゆる書類のひながた作りも随時おこなわなければならず休む暇もない。
二時間近く集中して書類と格闘した結果、山のように積み上げられていた書類の半分以上は片づけられていた。
ミケが時計を見ると、17時半を過ぎている。
「マヤ、今日はもう終わりにしよう」
軽く眉間に皺を寄せて書類の作成をしていたマヤは、その言葉に顔を上げた。壁の時計に目をやり、驚く。
「わぁ、もうこんな時間ですか…。あっ、すみません。休憩のお茶も淹れずに…」
「いや、俺もさっき時計を見るまで全然気づいてなかった」
「ふふ、二人ともすごい集中力を発揮しちゃいましたね」
「そうだな」
ひとしきり笑い合っていたが、ふとマヤが小首を傾げた。
「……終わりって言いますけど、まだ6時になってませんよ?」
「今日はお前の復帰初日だし、これだけ片づけられたら御の字さ」
「そうですか? 病み上がりを気にしてくださってるのなら、本当に私は大丈夫ですよ? まだまだいけます!」
マヤは笑いながら右腕で力こぶを作る仕草をした。
「はは、それは頼もしいが本当にいいんだ。それに終わりといっても書類処理のことであって、マヤ、お前にはまだ重要な仕事が残っている」
真剣なミケの声と “重要な仕事” という言葉に、マヤは少々緊張した。
「え? なんでしょうか…」