第18章 お見舞い
マヤの姿を認めるなり、ジムの顔は不自然にこわばった。
「……ほら気にしてただろ? マヤが顔を見せないって。もうすっかり元気になってこうして来てくれたよ。良かったじゃないか、ジム!」
マーゴの呼びかけには全く反応することはなく、ジムはマヤを睨みつけている。
……どうしよう。ジムさん、機嫌が悪そう…。
ジムの視線が冷たくて痛い。
「そんな怖い顔して突っ立ってんじゃないよ! あたしはもう帰るからマヤにお昼を出してやりな!」
「えぇ! マーゴさん、帰るんですか?」
「そうだよ、あたしは早番だからね。マヤ、本当に無事で良かったし、色々話せて有意義だったよ!」
マーゴはジムに背を向けながらマヤにしきりに片目をつぶって合図してくる。
「じゃあマヤ、よろしく頼んだよ!」
最後まで意味ありげにウィンクをしながら、マーゴは出ていった。
……マーゴさん! 行かないで…!
マヤの願いも虚しく姿を消したマーゴのあとを追うように、ジムも無言で厨房に消えた。
……えっ、これ… どうしたらいいの?
マヤは本当にどうしたらいいかわからず、立ち尽くしていた。
厨房から火をかけたり水を流す音が聞こえてくる。かちゃかちゃとお皿やスプーンを用意する音もして。
……きっと私のお昼ごはんを用意してくれてるんだわ…。
そういえばマーゴさんが確か “お昼を出してやりな!” と言っていた。
そのことを思い出したマヤは、じっとカウンターの前に立って待った。
しばらくすると昼食の乗ったトレイを手に、ジムが厨房から出てきた。
相変わらず機嫌が悪そうな雰囲気で、ジロリとマヤを一瞥したのちにカウンターにトレイを置いた。