第18章 お見舞い
「マーゴさん…」
「なんだい?」
「仮にジムさんが私に好意を持ってくれているとして…」
すぐさま遮られた。
「仮にじゃないよ!」
「は、はい…。じゃあ、好意を持ってくれているとして、困ります…。どうしたらいいのかわからないですし…」
マーゴは両手を腰に当てて笑い飛ばした。
「あっはっは! マヤは真面目だねぇ。いいんだよ、そんな真剣に考えてくれなくても。何も今すぐ恋人になってくれと言ってる訳じゃないんだ。あたしはね、嬉しいんだよ。あの無愛想で堅物でどこか欠陥でもあるんじゃないかと思ってたあの子が人並みに恋してるなんてねぇ!」
「……はぁ」
そうですねとも、そんなことないですとも言えず曖昧に声を漏らすことしかできない。
「だからマヤは別にいつもどおりでいいんだよ。気にしなくていいから。でも! ジムのお嫁さんになってくれるんだったら、いつでもOKだよ! スタントン家総出で大歓迎するから」
「……はぁ」
とそのとき、ガチャガチャと厨房の方から物音がした。
「あ! きっとジムだよ。あの子、今日は遅番なんだ」
「えっ」
「ジム! ジム! ちょっとこっちにおいで!」
本人のいないところで今まで散々勝手に話をしてきたので、今ここで顔を合わせるのはマヤとしては非常に気まずい。
その散々勝手に話をしてきたのは、ほとんどマーゴではあるのだが、そのマーゴは全く気にすることもなくジムを呼びつけている。
マヤは為す術もなく、ジムが姿を現すであろう厨房の入り口を凝視していた。
「ジム! 何をぐずぐずしてるんだい、早くしな!」
「あぁもう、うるせーな! なんなんだよ、ったく!」
悪態をつきながらやってきたジムは、マヤの姿を見るなり固まってしまった。