第18章 お見舞い
「……兵長はね、目が覚めたときにも付き添ってくれていてね…。優しくて強くて…。少し前まで怖くて、何を考えているかわからなくて。苦手だなぁ… なんて思っていたのにね。気持ちって不思議だね…」
とそこまでマヤが、ぽつりぽつりと自分の気持ちを言葉にしていたときに、ふいに大きな声で呼ばれた。
「マヤ!」
飛び上がるほどに驚いて振り向けば、ヘングスト爺さんが顔中を皺だらけにした笑顔で立っていた。
「ヘングストさん!」
「いや~ 心配しとったんじゃぞ。お前が巨人に食われそうになったと聞いての…、ほれ名前はなんじゃったかのぅ。アルテミスを連れてきたのがマヤ、お前でなくてその新兵…、ええっと名前をど忘れしてしもうたのぅ…」
……誰だろう? アルテミスを私の代わりに連れてきたなら同じ班の新兵かな? ギータ? それともジョニー? ダニエル?
マヤが後輩三人の顔を思い浮かべていると。
「ほれ、図体の大きな顔中そばかすだらけの…」
「あぁ! ギータです!」
「ギータじゃったか。最近すっかり新顔の覚えが悪くてのぅ。わしも年かのぅ…」
少ししょんぼりとしているヘングストをマヤは励ました。
「何を言ってるんですか。ヘングストさんは全然お年寄りなんかじゃないですよ? だって馬のお仕事は結構な力仕事だし、そのへんの若者よりよっぽど体力がないとできません。それに知識も必要で、それを忘れずに日々お仕事をなさってるヘングストさんは本当にすごいですよ!」
「……マヤ!」
激励の言葉に感無量の様子のヘングスト。
「だから元気を出してください。馬のことならヘングストさんの右に出る者なんかいないんですから!」