第18章 お見舞い
ヒヒーン! ブルルル、ブルッブルッ! ブルルル!
相変わらず左右の馬房から顔をのぞかせている馬たちは、元気に歓迎の声でマヤを迎える。
「ふふ、私もみんなとまた会えて嬉しいわ」
馬はどの子もみんな可愛い。笑いかけながら進んでいけば、とうとう会いたくてたまらなかった愛馬の馬房の前までやってきた。
ブヒヒヒン、ブブブブルッ! ブヒヒヒーン、ブブブブ!
「アルテミス!」
ブブブブ! ブブブブ! ブブブブルッ!
栗毛の優しい顔立ちの牝馬の瞳は、喜びの色に満ちていた。歓喜の鼻息が荒い。
マヤは持っていた入浴セットの入ったバッグを馬柵棒にかけると、馬房に入った。
そのなめらかな毛並みの美しい首に抱きつきながら、マヤは叫ぶ。
「……会いたかった! 会いたかったよ、アルテミス!」
ブルブルと鼻を鳴らして応えるアルテミスの体温が伝わってくる。
一度は死さえも覚悟したあの瞬間を思い返せば、今こうしてまた愛おしいアルテミスと会えた喜びを分かち合えることは奇跡のように思える。
その奇跡を起こしてくれたのが、リヴァイ兵長なのだ。
アルテミスのぬくもりと匂いを感じながら、リヴァイの面影も心に浮かぶ。
「ごめんね、怖かったでしょう? 目の前で巨人に食べられそうになるなんて…。でもリヴァイ兵長が助けてくれたから…」
愛馬の首すじを優しく撫でてやりながら、マヤは話しつづけた。
「ペトラに聞いたよ? 兵長とまるで会話をするみたいだったって。兵長の言うことを聞いて、オリオンについて走ったんでしょう? お利口さんだったね」
ブヒヒヒーン!
褒められて嬉しそうにアルテミスはいななく。