第18章 お見舞い
「では昨日も言ったように、4時に執務室に来てくれ。それまではゆっくりしておけ」
「了解です」
「じゃあ、あとでな」
「あっ、あの…!」
マヤは、去ろうとするミケを呼び止めた。
「……どうした?」
「……お風呂に入ってもいいでしょうか?」
少し言いにくそうにしている。マヤとしては、他の皆が訓練をしている時間に入浴することは、ためらわれる事案だ。
そんな様子のマヤを見て、ミケは笑い飛ばした。
「気にするな。そもそも日中の入浴が後ろ指をさされるようなものならば、浴場を立ち入り禁止にしている」
大浴場は、通いの清掃員が掃除をする午後の1時から3時の間以外は年中開放されていた。
「だから好きに入ればいい。ずっと入ってなかったんだろう? さっぱりしてこい」
「はい! ありがとうございます」
………。
満面の笑みのマヤから漂う香り。
数日もの間、風呂に入っていないからか、いつもの彼女の香りが濃くなっている。
かぐわしくて… 心地良い。
……本当は風呂なんか入らなくていいんだがな…。
本心を隠してミケは、
「……では、あとでな」
と扉を閉めた。
ミケの足音が遠ざかる。
マヤはうきうきしていた。
……良かった! 分隊長にも許可をいただいたし、堂々とお風呂に入れる!
まだ10時前だ。
一番にお風呂に入って…、そのあとは。
「アルテミスに会いたい!」
思わず声に出してしまう。そんな自分に半分あきれながらも、入浴セットのバッグに新しいタオルを詰めこんでマヤは部屋を出た。