第18章 お見舞い
「ミケ、どこに行く?」
唐突に投げかけられた質問に怪訝そうな顔をしながら、ミケは答えた。
「……医務室だが」
「マヤ?」
「あぁ。……ん?」
ふいに何かに気づいたようにミケは鼻をうごめかす。
「ラドクリフ、マヤに会ったな?」
「おっ! さすが鼻博士だな!」
「……お前の変なあだ名と一緒にするな」
心底嫌そうな顔をしてミケはさらに言う。
「見舞いか?」
「そうだったんだが、行ったら帰るところだった。すっかり元気で安心した。あのときは… あの本部に運びこまれたときはどうなることかと思ったもんだが」
まん丸の顔にいっぱいの笑みを浮かべるラドクリフ。
「そうだな。……で、マヤは?」
「部屋に帰ったよ。あとでお前のところに報告に行くと言っていたがな」
「そうか、わかった」
“いいってことよ” とばかりに片手を上げて幹部棟に入っていったラドクリフの大きな背中を見送ると、ミケは行き先を医務室からマヤの居室へ変更した。
背の高いミケは足も長く、一歩一歩の幅も大きい。
ぐんぐんと大股で歩いていると、あっという間にマヤの部屋の前にやってきた。
コンコン。
ノックをすると、すかさず “はい!” と声がした。
「マヤ? 俺だが…」
数秒のちに扉がひらき、マヤが顔をのぞかせた。
「ミケ分隊長!」
「ラドクリフに会って、もう部屋に帰ったと聞いてな…」
「そうなんです。すみません、分隊長のところに一番に報告に行かないと駄目ですよね…」
申し訳なさそうにうつむくマヤに、即座に否定する。
「いや、そんなことはない。ちょうど医務室へ行こうとしていたところだったんだ。治って良かったな」
「はい、ありがとうございます!」
優しいミケの言葉に、マヤは笑顔の花をぱっと咲かせた。