第18章 お見舞い
「調査兵にもぴったりだし、お見舞いにも最適な花言葉ですね。さすが花博士!」
「おい! それ、言うな!」
赤い顔をして太い腕を振り回しているラドクリフは、さながら森のくまさんだ。マヤはそんな分隊長を、失礼ながらも可愛いと思う。
「ふふ」
それまでずっと黙って二人のやり取りを見守っていたアウグストがパンパンと手を叩いた。
「さぁさ! すまんがそろそろ出ていってくれないかな? わしはこう見えても忙しいんでな」
「先生、悪かったな」「すみません!」
慌てて頭を下げて二人は医務室を出ていこうと扉を開けた。
一歩先に出たラドクリフにつづこうとしたマヤだったが、ふと何かを思い出したように足を止めた。
「アウグスト先生、ありがとうございました」
にっこりと笑って、もう一度頭を下げたマヤにアウグストは微笑んだ。
「ふむ。元気でな」
「はい」
マヤの声を残して、医務室の扉はゆっくりと閉まった。
階段を下りながらマヤに訊く。
「部屋に帰るのか? それともミケに報告か?」
一瞬ラドクリフの方を振り向いてから答えた。
「荷物もありますし、一旦部屋に帰ってからミケ分隊長に報告しようかと…」
「そうだな、それがいい。……部屋まで送っていこうか?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
二人は一階の廊下を歩き、すぐに一般兵士の居室棟の入り口に来た。
「分隊長、素敵なお花をありがとうございました」
「元気になって良かったな。ではまたな」
「はい。失礼します」
ぺこりと頭を下げたあとに、マヤは自室に向かって歩き始めた。
マヤが階段には見向きもせずに一階の奥へ進むので、ラドクリフは何とはなしに気になって行方を追う。突き当りの一番奥の部屋の前で止まったマヤは鍵をあけて入っていった。
……部屋は一番奥か…。
入室を見届けたラドクリフは幹部棟へ足を向ける。
そして幹部棟の入り口でミケと出くわした。