第18章 お見舞い
ピッピッピッ、ヒーヨヒヨヒーヨ。ピッピッピ、ヒーヨヒヨ。
朝はまた来る。人が生きている限り、何度でも。同じように。
「……んん…」
ヒヨドリの元気な朝のさえずりでマヤもまた目覚める。
まぶたをひらいて医務室の景色が飛びこんできた瞬間に、何かが頭をよぎった。
……あれ…? そばに誰かがいた… ような?
息苦しいような、何か。白い月と黒い影。
……夢…?
夢を見たのかもしれない。
思い出そうと首を傾げたときに。
ピッピッピッ、ヒーヨヒヨヒーヨ。ピッピッピ、ヒーヨヒヨ。
爽やかな朝を告げる小鳥の声で、はっと窓の方を見る。その動作でもう、夢を思い出そうとしていたこと自体がどこかへ飛んでしまった。
ベッドから出ると、窓を開けた。
「おは…」
………!
そうだ。昨日の朝は声をかけたら飛んでいってしまった。
マヤは急にそのことを思い出し、おはようの言葉をのみこんだ。
驚かさないように枝の上で羽づくろいをしているヒヨドリを優しいまなざしで見守る。
……ふふ、可愛い!
右の羽を広げ、くちばしでつくつくとついばむようにして羽毛の流れを整えていく。左の羽も広げては、羽毛をくちばしで挟み梳いていく。右と左の翼の手入れを終えれば、首をぐいっと真後ろにまわして背中の羽毛をついばむのに余念がない。
ヒヨドリの懸命な羽づくろいを見ていたら、マヤは自分も手入れをしたくなってきた。
「私も顔を洗ってくるわね!」
羽づくろいに夢中になっている枝の上の小鳥に言い残して、医務室を出ていった。
便所で用を足し手を洗ったあとは、手洗い場で歯を磨き、顔を洗う。白いタオルで顔を拭くと、鏡を見ながら櫛で髪を梳いた。
さらさらとした濃い茶色の長い髪は、もともと寝ぐせがつかず扱いやすい。
さっと簡単に梳き終わると、両手で頬を軽く叩いた。
「……よしっ! 今日から復帰! 頑張ろうっと!」