第18章 お見舞い
月光のほのかな艶が、マヤの白い頬を際立たせていた。
薄暗い部屋で白銀に光るその肌の白さは、極上の香りをまとった紅茶のパートナーである美しい白い陶器のカップのようだとリヴァイは思った。
繊細な顔の輪郭のカーブも、優雅なカップのそれを彷彿とさせる。
そんなことを思い浮かべながらただただ、今日一日求めつづけていた白い顔を見つめていると、無意識のうちに右手を伸ばしてしまう。
………。
そっとそのやわらかな頬に、右手の中指と薬指と小指の三本でふれる。それだけで言葉にはならない何かが胸の内にあふれる。
それは清らかな湧き水のような透明の感情であるはずなのに、手にすくって目を凝らせば仄暗い欲望を孕んでいて。ともすれば清純な想いを、滾る激情が覆い尽くしてしまう。
……クッ…。
昨夜は一目顔を見られたらそれで良かった。
指を添えた頬から伝わるぬくもりだけで、マヤのすべてを感じた気になっていた。
だか今夜は。
もっと欲しいと。
そう願わずにいられないのは、はたして罪なのであろうか。
自問しても答えはわからず立ち尽くす。
今できることは、ふれた指先から伝わる確かな熱と脈打つ生命(いのち)を感じて自身の欲望と向き合うだけ。
頬に吸いつくようにふれた指先にほんの少し力をこめ、すべらせた。なめらかな肌は若さゆえの弾力をもってリヴァイの指先を押し返す。起こしてはならないとわずかな力ですべらせていた指先に、想いを乗せる。
すると白く骨ばった指はすぐに目的の場所にたどりついた。
白い肌にぷっくりと浮かび上がる紅くみずみずしいくちびる。
厩舎の馬房で無邪気に眠るマヤを見つけたときに、むしゃぶりつきたいと劣情を抱いたくちびる。
スペリオル村のあの一室で水を飲ませてやっていたときにも。その水を滴らせていた艶めかしいくちびるを吸って吸って奪って、貪るように噛みついて。狂おしい想いで凝視していたくちびる。