第18章 お見舞い
「知らなかったよ、マヤ。良かったら、茶葉を少し分けてくれる? 代金は払うから」
「もちろんです、ナナバさん。でもお金はいいですから。飲んでいただけたらそれで嬉しい」
「そう? なんか悪いな…」
遠慮した様子のナナバに、
「全然悪くないです。父の紅茶をたくさんの方に飲んでもらえたら、本当に幸せだから」
そう伝えると、マヤは微笑んだ。
「じゃあ遠慮なくもらうね、楽しみだな」
「え~、ナナバずるい~! 私も欲しい!」
じだんだを踏むハンジ。
「ハンジさんにもあげますから暴れないでください!」
「ホント?」
「はい、ほんとですよ」
「やっほー! マヤ、大好きだよ!」
無邪気に浮かれているハンジを横目にナナバとニファはささやき合った。
「……ハンジさんって時々めちゃくちゃ子供っぽいよね」
「そうですよね、今なんか完全にマヤの方が大人」
「だね」
耳ざとく聞きつけたハンジの声が二人の頭上に降ってきた。
「君たち~! 誰が子供だって?」
「あはは…、聞こえてました?」
「うん、ばっちり」
とウィンクしてみせるハンジだったが、再度パンッと手を叩いた。
「さぁ! 本当にもう帰るよ」
「そうしますか、おなかも空いたし…」
ナナバのその言葉にマヤが仰天した。
「え! まだごはん、食べてなかったんですか?」
「うん」
「すみません…!」
「なんでマヤが謝るの?」
「だって私はとっくに食べましたし、なんか… すみません…」
「あはは、変なマヤ!」
ナナバの笑い声に、ハンジとニファのものも重なる。
「そうそう、マヤって変だよね!」
「ハンジさんほどじゃないですけどね!」
「ふふ」
マヤの笑い声も重なって、医務室は楽しそうな空気に包まれた。