第18章 お見舞い
「一応、話はまとめてはある感じなんだけど、でも完全には解決してなくてさ。なんかもやもやっとする終わり方なんだよね。でも続編が出るってことで喜んでたんだけど…」
ニファの意味ありげな語尾に、ついおうむ返しをしてしまう。
「……だけど?」
「本当だったら来月発売だったのに、延期になってて。ちょっとイライラしてるのよね」
「それは残念ですね…。早くつづきを読みたいですもんね」
「そうなのよ」
「なんで発売延期に?」
「さぁ…。理由は発表されてないんだよね」
「ふぅん…。気になりますね…」
「まぁ発売されたら即買うし、そうしたらまた貸してあげるからね! ……あ、私が読んだあとになるけどね」
ニファの言葉にマヤは慌てた。
「え! そんな… 悪いです。今度は自分で買いますよ、ニファさん」
「いいのいいの! その代わり、またお茶っ葉ちょうだい?」
「それはもちろんいいですけど…。うちの茶葉と引き換えだなんて割が合わなくないですか?」
「なぁに言ってんの! マヤんとこのお茶っ葉、すごく美味しいよ」
「ありがとうございます」
それまで二人の会話を黙って聞いていたナナバが、たまらず入ってきた。
「ねぇ、マヤんとこの茶葉って?」
どちらが答えるかマヤとニファが一瞬顔を見合わせたそのすきに、ハンジが得意そうに叫んでいた。
「ナナバ、マヤの家は紅茶屋さんなんだ!」
「へぇ…、そうなんだ?」
「はい。小さな店ですが、父が茶葉を調合してるんです」
「私があの本を貸したときに、お礼にってマヤの家の紅茶の葉をくれたんだけど、これがもう… 香りがすごく良くって美味しかったんです!」
サイドテーブルの上にある本 “恋と嘘の成れの果て” を指さしながら、ニファは自分のことのように得意げに話す。