第18章 お見舞い
「あははは! マヤ、確か飲み会のときもそんなこと言ってたねぇ! モブリットが私を好きだとかなんとか」
大笑いするハンジ。
「いや… あれはどう見ても普段の酷使への悲哀だろ…」
つぶやくナナバ。
「マヤったらロマンチストなんだから」
悪戯っぽく笑うニファ。
「私、ハンジさんとモブリットさんの関係が好きなんです。上司と部下…、先輩と後輩…、男性と女性…、大切な仲間で友人…。そういうの全部超越していて…」
そこで言葉が詰まってしまったマヤにハンジは優しい声を出す。
「超越して… なんだい?」
「うーん… うまく言えないけど、家族みたいな。でも家族じゃないけど、きっともっと深い何か…」
マヤは胸の前で組み合わせた手を見つめながら。
「いつか私にも、そういう人が現れたら… きっとそれが何かわかると思います」
「そうだね。マヤにも現れるよ… というかもう現れ…」
ナナバはハンジの言葉を急いで遮る。
「マヤにも! モブリットさんみたいな素敵な人が現れて思う存分こき使えたらいいね!」
「え~、こき使うってひどいなぁ! 私はモブリットをこき使ってなんかいないよ~」
口を尖らして抗議するハンジに、ニファは冷たい視線を送った。
「……こき使ってますから!」
「あははは、そうかい?」
「「そうです!」」
声を合わせるナナバとニファの息がぴったりな様子にマヤは笑った。
「ふふ」
楽しそうに微笑んでいるマヤに気づいて、ハンジは思いついた。
「そうだ! マヤなら、こき使ってるとは思わないだろう? なんてたって深い愛とか言ってくれちゃってるんだから」
「いいえ、こき使ってるとは思いますよ? ただし、そこに愛があるんじゃないかなぁって」
マヤの言葉を受けて、ナナバがまとめた。
「私とニファはこき使ってる。マヤはこき使ってるけど愛がある。ハンジさんはこき使ってない。三対一で、こき使ってることに決まりだね!」