第18章 お見舞い
その後しばらく医務室は “年忘れの宴会” の余興の話で盛り上がった。
「私はやっぱりミケの嗅ぎ芸が地味だけど安定してると思うね。毎年見てるが飽きないよ」
とハンジが言えば、ナナバも同意する。
「なんせ分隊長クラスで唯一皆勤賞で披露してくれてますもんね。律儀で真面目なところが分隊長らしい」
「私は… ベタだけどゲルガーさんの一気飲みが好き。一気に場が盛り上がりますもん!」
ニファの意見にナナバは眉間に皺を寄せる。
「何を言ってんのよ、ニファ。あんなの酔っぱらいの日常なだけで芸でもなんでもないよ!」
「そうかもだけど…。あっ! 口からお酒を吹いて火とかつけたらいいんじゃないですか?」
「それはいいね! 今度ゲルガーに言っとくよ」
親指を立てるナナバ。
「マヤは誰の芸が面白かった?」
にこにこと笑いながら皆の話を聞いているマヤにハンジが話しかけた。
「私は… うーん、そうですねぇ…。皆さん楽しいけど、モブリットさんのつぶやき芸が面白かったです」
「あ~、アレね! ぼそぼそとモブリットです… 今日もハンジ分隊長にこき使われてます… とかつぶやくやつね!」
「そう、それです! お二人のなんてことない普段の様子が目に浮かんで大好きです」
「あはは、確かにね。モブリットさんの悲哀が笑えるよね」
ナナバはそう言って笑ったのだが、マヤは首を傾げた。
「いえ…、私には悲哀とかじゃなくって、なんていうか…、すごく愛を感じます」
「「「愛?」」」
ハンジ、ナナバ、ニファの三人の声が綺麗に揃った。
「はい、愛です。ハンジさんに対するモブリットさんの、深~い愛を感じます!」