第18章 お見舞い
ハンジとマヤのやり取りを黙って聞いていたナナバは内心、やっぱりねと思っていた。
……あのクラバットは恋のまじないなんかじゃなかった。
そりゃそうでしょう。
あのリヴァイ兵長が恋をするなんて想像できないし、百歩譲って恋をしたとしても、まさかまじないをかけるなんて!
……ありえない。
さぁ、ハンジさんはどうするかな?
ナナバは少々意地の悪い気持ちを抱きながら、事態を見守る。
「いや~、マヤ。どうやら私は勘違いをしていたようだ」
「勘違い?」
「あぁ。あのとき… 君の胸にかけられた白いクラバットを見てこう思ったんだ。“これは何か意味があるに違いない” とね」
この先何を言われるのか全く見当がつかず、マヤは不安そうな顔でうなずく。
「……だが、雑巾代わりに水を拭くとは…。私の見立ては外れていたようだ」
「……そうですか…」
いまひとつ何のことだか理解できなかったが、とりあえずマヤは相槌を打つ。
「うん。私が考えていたような深い意味はなく、きっと普通の布として使ったんだろうね」
自分の間違いや勘違いを潔く認めることは、信頼できる上司として重要な要素である。
……さすがハンジさんだわ。
ナナバは、ハンジの態度に敬服した。
マヤはもうこれ以上何も訊いてこない様子だし、勘違いだと自ら認めたハンジはすっきりした面持ちで笑っているし、これで解決したなとナナバが思っていたところへ、予想外の声が飛びこんできた。
「あの~、さっきから話についていけないんですけど、結局 “神聖な儀式” って?」
ナナバが声のした方を振り向くと、ニファが心底疑わしそうな顔で皆を見渡していた。