第18章 お見舞い
「そこでだ。マヤに少しでも気持ち良く目覚めてもらおうと、体を拭くことにした。ナナバと一緒に布団をめくると…」
意味ありげにハンジはそこで言葉を切ると、マヤに問いかけた。
「……そこに何があったと思う?」
くわっと見開いた眼鏡の奥の瞳に捕らえられ一瞬たじろいでしまったが、マヤは答えた。
「クラバット… ですよね?」
「あれ? 知ってたのかい?」
「はい。水をこぼしてしまって、クラバットで拭いたんです」
「え? 神聖な儀式の小道具を雑巾がわりにしたのかい?」
その赤みを帯びた茶色の瞳を真ん丸にするハンジ。
「え? 神聖な儀式の小道具って?」
今度はマヤが、その琥珀色の瞳を丸くする番だ。
「いや、その… クラバットを雑巾代わりにしてリヴァイは怒らなかったのかい?」
「へ? 怒るも何も、クラバットで拭いてくれたのは兵長ですし…」
「そうなんだ…」
「………?」
なんだかがっかりしているハンジに、マヤは一体どうしたのだろうと不思議な気持ちでいっぱいになった。
「それで水を拭いたあと、リヴァイはクラバットをどうした?」
「えっと…」
あのときクラバットの行方を特には意識していなかったマヤはハンジの質問に戸惑うが、懸命に思い出そうと眉根を寄せた。
「確か… 綺麗に角を揃えてたたんでからポケットに入れたような…? うーん、はっきりとは覚えてないです。というかハンジさん、さっきからなんですか? クラバットがどうかしたんですか?」
何がなんだかわからないマヤは声を尖らせた。