第18章 お見舞い
「………」
アウグストは言葉に詰まってしまった。
相手が一般の一兵士なら追い返すところなのだが、ハンジは分隊長。
立場のある人物だ。ここは鍵を任せても問題ないであろう。
そう判断して譲歩した。
「わかった。では、よろしく頼みます。マヤ、また明日な」
「はい、先生。おやすみなさい」
とマヤが頭を下げれば、ハンジが叫ぶ。
「さすがアウグスト先生! 話がわかるぅ!」
「「お疲れ様です」」
ナナバとニファの挨拶にも見送られ、アウグストは静かに退室した。
ナナバが手際よく、部屋の隅に積み重ねられた丸椅子三つをベッドの脇にならべる。
「サンキュー」「すみません」
ハンジとニファはそれぞれに礼を言いながら座った。
「マヤ~! 元気そうじゃないか」
「はい、明日には復帰予定なんです」
マヤがハンジに笑顔で返事をすると、ナナバも嬉しそうに声をかけてくる。
「一時はどうなることかと思ったけど、回復して良かったね」
「ありがとうございます、ナナバさん」
心配そうにニファも訊いてくる。
「怖かったんじゃない? もう大丈夫なの?」
「大丈夫です。皆さんと一緒だから怖くないです」
「さすがマヤ、優等生の返事だね!」
ナナバがふざけてからかうと、ハンジがニヤリと笑った。
「マヤ、皆さんと… ではなくリヴァイと一緒だから怖くないの間違いなんじゃないかい?」
「違います! なんてこと言うんですかぁ!」
顔を赤くしたマヤを面白そうに見つめながら、さらに言いつのる。
「だってさぁ、リヴァイの庇護欲は異常だったよ。私がナナバと一緒にマヤの体を拭いて…」
そこまで聞いて驚いたマヤは思わず、“え?” と声を漏らしてしまった。