第18章 お見舞い
「そうですね。兵長も壁外調査のあとは忙しいでしょうから来ないと思いますよ? ……でも…」
マヤが顔を曇らせたので、どうしたのかと気にかかる。
「……でも?」
「……助けていただいたし、付き添いとか色々お世話になったので、もう一度ちゃんとお礼を言いたい。だから… 逢いたかったです…」
逢いたかったと声に出す前の、ほんのわずかな息遣い。紅く色づいた頬にミケが何も気がつかない訳がなかった。
だが素知らぬふりをする。
「なら、ここを出たら礼を言いにいけばいい」
「わざわざ…、変じゃないですか?」
「そんなことはないと思うが、気になるなら執務室で会えるようにしてやる」
「え? そんな…! 別にいいです。自分でなんとかします」
顔の紅が、もっと濃く染まっていく。
その真っ赤な顔の前で手をぶんぶんと振りながら断ってくるマヤが、無性に愛おしい。
「遠慮するな。元気になって執務の補佐に復帰したら、リヴァイに礼を言う。これは業務、上司命令だ。いいな?」
有無を言わせぬ口調で、強く、それでいてどこか優しさにあふれていて。
「……はい、わかりました」
素直にうなずいたマヤに優しいまなざしを向けたあと立ち上がる。
「明日は4時くらいに執務の手伝いに来てくれたらいい。それまで自由にしておけ」
「了解しました」
軽くうなずいて背を向けて去るミケに、マヤは慌てて礼を述べる。
「ありがとうございました」
「あぁ、明日な」
ミケはアウグストに会釈をすると医務室を出ていった。
「アウグスト先生」
「どうした?」
「明日は何時くらいにここを出られますか?」
「ふむ…。朝食のあと一番に診察して…、9時過ぎだな」
「そうですか。ありがとうございます」
……夕方の4時までには結構時間があるわ。まず部屋に帰って…、それにアルテミスに会いにいかなくちゃ…。
ううん、その前にお風呂に入りたい!
マヤは明日のことを考えて胸を躍らせた。