第18章 お見舞い
そう気づいた次の瞬間にはもう、すれ違う距離まで接近していた。
………!
リヴァイが抱いているのはマヤだ。ぐったりして意識がないようだ。
「リヴァイ!」
当然ここで何があったかをリヴァイの口から聞けると思い、ヘラクレスの手綱を引き速度を落とす。
だがリヴァイはそのままの神速ですれ違うと行ってしまった。
「マヤはどうした!?」
叫ぶ俺に、返ってきたのはひとことだけ。
「ハンジに訊け!」
あのときのリヴァイの全身から滲む、ただならぬ緊迫感。
忘れはしない。
その後、本部で耳にしたリヴァイの声。
「俺の部屋に連れていく」
横抱きにして本部を出ていく前に見せた青灰色の瞳の仄暗さ。
間違いではない。勘違いでもない。
あれは他の兵士に対する態度とは明らかに異なっていた。
……確実に、リヴァイはマヤを…。
ベッドから起き上がり、無垢な瞳で答えを待っているマヤにこう言ってしまいたい。
「それは…、リヴァイにとってお前は特別みたいだから俺より先に見舞っていると思ったんだ」……と。
だがきっと、それをマヤに告げるのは時期尚早。
マヤの気持ちが揺るぎないものになるまでは。
今はまだ、マヤの心は誰の色にも染まっていないはず。
だとすれば。
……まだ、俺にも一縷の望みがあるのだろうか…。
いや、俺はマヤの幸せを望むだけ。
そうだろう? 自分のものにしたい訳ではない。
……もう恋はしない。
ミケは心を決めた。
「マヤ、リヴァイが先に来ていると思ったのは… お前が意識をなくしていたときに付き添っていたのはあいつだからな。当然、責任感の強さからも見舞っただろうと考えたんだが。違ったんだな。さすがに書類に忙殺されたか…」